『JTOSオープンDAY #1』開催レポート

JTOSとしての初イベントとして、『JTOSオープンDAY 実現したい”未来の当たり前”を語りつくす1日!』と題し、トークセッションとミートアップセッションを11月21日に開催しました。ハイブリッド形式で開催し、会場は満員御礼、オンラインでも150名以上の方にご参加いただきました。

トークセッションでは、JTOSから生まれたPoC第一弾のバイオームと、JTOSを構成する4社のうち東急とJR東日本スタートアップのトップが登壇。共創に至るまでの生の声や、JTOSが目指す“未来の当たり前”、スタートアップにとってメリットとなる“社会実装力”など、熱いトークが繰り広げられました。トークセッションの模様を抜粋してレポートします。

(写真左から)
登壇者
 JR東日本スタートアップ株式会社 代表取締役社長 柴田 裕
 株式会社バイオーム 代表取締役社長 藤木 庄五郎
 東急株式会社 常務執行役員 東浦 亮典
モデレーター
 小田急電鉄株式会社 デジタル事業創造部 米田 航

「挑戦を社会実装へ 共に道を拓く」JTOSとは

小田急 米田(モデレーター)

まずは冒頭、鉄道横断型社会実装コンソーシアムJTOSとは何か、というところから簡単に説明させていただきます。JTOSは、志を持った挑戦者たちの熱い想いを社会に実装していきたいということから、鉄道事業の4社が集まったコンソーシアムです。「挑戦を社会実装へ 共に道を拓く」をミッションとして、今年9月から活動を開始しています。“挑戦を社会実装”という言葉にこだわる我々が掲げているビジョンは「挑戦者の想いを 未来の当たり前に」です。我々鉄道会社も、交通系電子マネーや、相互直通運転など、最初はそんなことできないと言われたことを、実現してきました。かつては“挑戦”だったことを、今では生活の中で当たり前にできている。そんな我々だからこそ、スタートアップの皆様と一緒に取り組んでいくことで、“未来の当たり前”を作っていけるんじゃないか、という想いで日々活動をしています。

“挑戦を社会実装”とは

―“挑戦を社会実装”という言葉がミッションにも入っていますが、実際にはどういうことなんでしょうか。この言葉へのこだわりを教えていただけますか?

JR東日本スタートアップ 柴田

インフラを持っている鉄道会社だからこそできることって何だろうと考えた時に、この“社会実装”という言葉が非常にフィットしたんです。私たちなら、スタートアップの皆さんのアイデアやテクノロジーを形にできるんじゃないかと。リアルのインフラを培ってきた4社だからできることって結構あると思うんですよ。まさにバイオーム・藤木さんの「生物多様性・地球を守ろう」という挑戦を、後押しするという挑戦ができる。「挑戦者の挑戦を形にする挑戦」、それが“挑戦の社会実装”であり、JTOSはとことんそこに注力していきたいと思っています。

―バイオーム藤木さんから見て、実際に“挑戦を社会実装”という言葉に対して、感じることがあればお聞きしてみたいです。

バイオーム 藤木

めちゃめちゃいいなと思ってます。僕だけじゃなくて、スタートアップって基本的には“挑戦”してると思うんですけど、社会実装までの壁ってすごく高くて、超えられずに消えてしまうスタートアップは山ほどいます。そこを応援しようというメッセージを大企業として出されているというのは、心強いしありがたいです。

環境を破壊することでお金が儲かる社会を、環境を守る方が儲かる社会に変えていきたい、というのが僕の挑戦なんです。“挑戦”って言うのは簡単だけど、それを社会に認めてもらうというのは本当に大変。苦しい思いをしてきたからこそ、このように皆さんとご一緒させていただけることは本当にありがたいですし、大企業とは思えないスピード感で、最高の環境でやらせてもらってるなと思っています。

―心強いと言っていただいて、嬉しいですね。続いて、鉄道会社として街づくりを進めてきた東浦さんに伺いたいのですが、“挑戦を社会実装”ってどんな意味がありますか?

東急 東浦

鉄道会社は歴史的に、自社のテリトリーを死守して、他社と協力することはまずなかったんですね。日本全体の市場が大きくなっていた時はそれで良かったんですが、今はもう成熟して人口減少・高齢化の時代、そんなことを言ってる場合ではない。

それから、相互直通運転により鉄道のネットワーク化がものすごく進みました。お客さまは別に沿線を気にせず、ただ目的地に向かうために電車に乗っているんですよね。そんな中で鉄道会社同士が島争いしてもしょうがない。同じ業界の中で、非常に似た体質・社会観を持っている我々が組めば、大きなイノベーションを起こせるかもしれないと思っています。

実証実験・社会実験って、いろんなところでやられているんですけど、実験を終えて予算が尽きると終わってしまう、ということが本当に多いんです。我々は実験のため実験はやらない、必ず社会実装する、ということにこだわっています。

共創第一弾:いきものGOのここが面白い!

詳細:https://biome.co.jp/ikimono-go-2023/

―JTOSから生まれたPoC第一弾として、バイオームさんとの共創を始めています。「いきものGO」の魅力を教えていただけますか。

バイオーム 藤木

たくさんあるんですけど・・・まず、いきものGOに参加すると、自分の人生がちょっと豊かになる感覚を持てるような企画にしたいと思っています。例えば、普段道を歩いていて、雑草が生えていたりとか、蝶が飛んでいたりとか、何も気にしないじゃないですか。でも、その雑草や生き物がどんなものかを知ると、今までただ歩いていた道が少し変わって、情報に満ちていて世界って深くて面白いなって、感じられると思うんです。そうやって感度を高めて、世の中の解像度が上がっていくという体験をぜひして欲しいです。

そして、個人で体験するだけでなく、そのデータが沿線のネイチャーポジティブのあり方を考えていくための基礎データになるんです。自分だけにとどまらない、社会全体に影響を与える大きな一歩として、ぜひ参加いただきたいと思っています。

JR東日本スタートアップ 柴田

いきものGOって、移動と本当に相性が良いんです、外に出るのがすごく楽しくなるんですよね。家族旅行やツーリズムと非常に相性が良いですし、釣りや登山と並ぶようなアウトドアツーリズムの一つとしてやってみてほしいですね。歩くって健康にも良いですし、健康寿命の延伸にも役立つと思います。

いきものGOの真骨頂って、生物多様性という非常に深刻な社会課題と、スマホのゲームアプリというエンタメを掛け合わせたことだと思うんです。楽しく社会課題を解決できるってとても重要で、楽しくないと続かない。まさにその通りで、いきものGOは、楽しいから続くんですよ。そんないきものGOの世界観と、インフラを持っている我々がコラボする意義は非常に大きいですね。

東急 東浦

以前、地域の人たちと、我が街の緑ってどんな種類のものがあるか、半日街歩きしながらスマホで撮影して共有しようというようなプログラムに参加したことがあるんです。このバイオームというアプリがあれば、そういった取り組みがさらに拡散されていくんだと思います。たとえば駅係員が、我が駅のそばにはこんな植物があります、みたいなことをやって、そこに地域の人も参加していくと、駅ごとに差もわかって面白そうですよね。まずはJTOSメンバーから、そういった取り組みをどんどん広げていきたいですね。

“未来の当たり前”を描く

―最後に、皆さんが目指す“未来の当たり前”について、簡単にお聞かせください。

バイオーム 藤木

難しいですね・・・。僕自身は「環境保全」をテーマにやってるのですが、でも最終的には「環境保全」って言葉はなくなってほしいと思ってるんです。別に保全なんかしなくても守れる社会になればいいなと思っていて。「私は環境保全のために頑張ってます」とかじゃなくて、社会がそれを支援することで、個人がどう思っているかは関係なく環境が守られる、そういうものになれば、最終的に「環境保全」って言葉が必要なくなる、それが未来の当たり前になったらいいなと考えています。そのためのデータのベースになる部分を作っていくために、今取り組みを進めています。

東急 東浦

いくつかあるんですけど、1つ目は、オフグリッド生活が当たり前という世の中。ある程度自分が生活していけるだけのエネルギーは自分で生み出すことができるような世の中が良いなと思いますね。2つ目は、2地域居住が当たり前になり、全国民が税制面の優遇を受けながら2カ所家を持てること。これにより災害時も無駄に行政が復興住宅などをつくらなくても済みます。3つ目は、1日3時間くらい働けば良い生活っていうのを実現したいですね、怠け者なので(笑)。その3つを未来の当たり前として目指したいなと思います。

JR東日本スタートアップ 柴田

JTOSとしては、2つあって。1つは、挑戦することが当たり前になるといいなと思っています。特に大きな組織だと、なかなかリスクを取って新たな挑戦をすることが難しいですけど、JTOSでは、挑戦者を応援することで、“挑戦”を当たり前にしたいなと思っています。

もう1つは、JTOSとして掲げている4つの重点テーマ、「ネイチャー・ムーブ・カルチャー・ウェルビーイング」。企業が主語ではなく、街や社会が主語となるように、この4つのテーマを設けています。各テーマに対して、インフラを持っている我々だからできることは色々あると思うので、こうなったらいいなという未来を実現していくことが、僕がやりたいことですし、相互直通運転だったり交通系電子マネーだったりが“当たり前”になったのと同じように、新しい“未来の当たり前”を提供していきたいと思います。

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